朝9時
電話の音で目が覚めました。
番号を見てみるとスマホからの着信。
「迷惑電話の可能性あり」と記載されていましたが、お水の宅配だったりクレジットカード会社だったりにも表示されることがあったので「ん?」と思ったくらいでした。
私「……もしもし?」
警視庁「警視庁の○○です。まーちゃんさん(フルネーム)のスマホでお間違いありませんか?」
私「はい!? えぇ、間違いありませんが……」
警視庁を名乗る男からの電話

警視庁「いけだたかまさをご存じですか?」
私「いいえ、知りません……」
警視庁「いけだたかまさ、知りませんか?」
私「存じ上げませんが……」
警視庁「本当ですか? 少しも関わりがないと?(怪しんでいる感じ)」
私「はい……名前は知らない方です。その方がなんですか?」
警視庁「じつは、マネーロンダリングで指名手配中だった、いけだたかまさが山口県で捕まりましてね」
警視庁「家宅捜索したところ、まーちゃんさんのキャッシュカードがあったんですよ」
私「え?」
警視庁「詳細をお話しする前に……まだこの話は極秘で行われている調査なので、一人になってほしいんです。今は会社ですかね?」
私「いいえ、家にいるので一人です」
警視庁「在宅ワークですか? 個人事業主さん?」
私「はい、そうです」
警視庁「では、問題ありませんね。お話の続きをさせていただきます。あなたのキャッシュカードが、犯罪に利用されました」

電話の内容は主にこんな感じ↓
・マネーロンダリング事件で指名手配中だった、「いけだたかまさ(38)」を逮捕した
・山口県警から依頼を受けて連絡している警視庁
・家宅捜査したところ、200件くらいの銀行口座が見つかり不正に使われていた
・主に使われていたのは私のpaypay銀行のキャッシュカード
・私も犯罪に関わった可能性があるから捜査がしたい
私のpaypay銀行のキャッシュカードが犯罪に利用されている

警視庁「押収したカードは去年の7月に作ったPaypay銀行です。下四桁は〇〇〇〇」
私は確かに去年Paypay銀行を作っていました。
何月に作ったかまでは覚えていませんが……。
そして使わずに家に置いてあることを思い出したのです。
私「ちょっと待ってくださいね。あ、あった。いいえ、私のPaypay銀行の下四桁はそれではありません」
警視庁「下四桁〇〇〇〇ですよね?」
私「いま、手元にありますが違います」
警視庁「では2枚aypay銀行を作った記憶は?」
私「……? そもそも、キャッシュカードって2枚作れませんよね?」
私(20年ほど前かな? 三菱UFJ銀行で貯蓄用と出費用のカードがほしくて聞いてみたら、特別な理由がない限りダメだと言われたけれど……)
警視庁「作れますよ」
私(? 作れるんだ?)
警視庁「というか、Paypay銀行から開設の電話が届いていないんですか? 手紙とか。それおかしくないですか?」
私「私が持っているPaypay銀行は開設の手紙がきましたよ。でもその下四桁のはわかりません。というか、私がもっている口座の手紙だと思い込んで詳細には見ていないかもしれません……」
警視庁「そうですか……通常は電話で確認するんですが、電話もかかってきていないと?(怪しんでいる感じ)」
私「去年のことなので詳細には覚えていませんが……記憶にある限りは、この手元のあるカードのことだと……」
警視庁「そうですか……ところでマネーロンダリングについて詳しく理解されていますか?」
私「くわしくは……」
警視庁「ではご説明しますね。マネーロンダリングとは~~~いけだたかまさが~~~麻薬が~~~~(話が長い)」
私(ほかの200枚の人は被害者だったんだよね?)
私(だったら普通に考えて私も被害者だよね?)
私(ってか、マネーロンダリングの説明とか長々とはじめて、もう電話がかかってきてから40分経ってる……何がしたいのかわからない……)
私はpaypay銀行と言われましたが、楽天銀行だったりするパターンもあるようです。
海外サイトを使うか、不正な引き落としはないかの確認
警視庁「では何か、最近口座を売ったとか、海外の通販サイトにアクセスして口座番号入力したとかありませんか?」
私「通販サイトは利用していますが、その銀行口座ではありません」
私「口座を売ってもいません」
警視庁「少しでも、何か怪しい点はありませんか? お使いのクレジットカードで100円とか少額の用途不明な引き下ろし金額があったりとか」
私「日本ですか? 海外?」
警視庁「それはどちらでも」
私「いやぁ、そこまでは……でもたまに使い道がわからない引き落としは電話で確認入れたりしますけどね」
私「え! もしかして、私のキャッシュカードが犯罪に利用されることで、私の口座からお金が引き落としされたり、クレジットカードが勝手に利用されたりしているんですか!? 請求がきますか!?」
警視庁「いえ、それは大丈夫です」
私(え!! 大丈夫なのに何で聞いてきたの!?)
警視庁「ほかに、犯人になぜまーちゃんのキャッシュカードが使われているか、少しでも手掛かりはありませんか?」
私「う~ん。正直、そのキャッシュカードを作ったときは何件かキャッシュカードが必要だったのです。取引先が個人破産しちゃって資金繰りが大変で」
私「でも、結局なんとかなって、使ってないんですよ。だから、そのときはいろいろなキャッシュカードの申請をしたので、もしかしたらそこで怪しい金融サイトとかあったのかなぁ……」
警視庁「なるほど……それかもしれませんね」
私を犯人だと疑っている

警視庁「わかりました。今お話しさせていただいた感じとしては、まーちゃんさんも他の200人と同じ被害者だと僕は思いました」
私「はい、その通りです!!」
警視庁「しかし、山口県警はそうは思っていません。いけだたかまさは、まーちゃんさんが住んでいる市の出身なんですよ」
私「なんていいました? 電波が悪いようで……」
警視庁「これで大丈夫ですか?(受話器が近くなった)」
私「はい……」
警視庁「山口県警はまーちゃんを疑っています。いけだたかまさは、まーちゃんさんが住んでいる市の出身なんですよ」
私「そうなんですか」
警視庁「だから、交友があっていけだたかまさと共謀したか、口座を売ったりして助けたかと思われています」
私「私、ここに引っ越してきたばかりで地元は違うんですけども……」
警視庁「……引っ越してきたばかりということは、あまり外出はされませんか? 人に会ったりだとか、打ち合わせだとかそういうことはあまりない?」
私「う~ん。そうですね。打ち合わせはあまりないです。でも子どもが小学生でクラブに入っているので、クラブの人とは週4くらい会いますよ」
警視庁「……そうですか……」
今から警察署に来てほしい
警視庁「では、いまから、山口県警にこられますか?」
私「え! 山口県ですか!? 子どものお迎えもあるので行けません!」
警視庁「そうですよね……」
私「静岡市の警察署なら行けますよ」
警視庁「いいえ、管轄が違うので……」
私(警察同士情報共有とかすればいいんじゃないの? 私が山口に行くよりよっぽどよさそうだけど……)
私(なんか……なにかがあやしいんだよね……)
・見えない目でPCを操作
・「いけだたかまさ」と調べる
私(いけだたかまさ、マネーロンダリングで逮捕、ん? 大阪府警? 今山口県警っていってなかった?)
警視庁「では、今から山口県警に電話をつなぐので、直接お話してもらえますか?」
私(ん? 今スマホからかかってきているのに、このまま転送とかってできないよね?)
警視庁「よ(よ)ろ(ろ)し(し)い(い)で(で)す(す)か(か)」
私(……待って、待って待って……声が聞き取りにくかったの、電波が悪いからじゃない……これ、ボイスチェンジャーじゃない……?)
私(待って待って、これ、何かがおかしい、こういうときは一回電話を切らないと……それで、再度かけなおすんだ。それがいい!!!!)
私「私、一度電話を切ります!」
警視庁「え?」
私「数分後に折り返すように山口県警の方にいっていただけますか?」
警視庁「え? 僕が折り返さないといけないんですか?」
私(えぇ、山口県警と話すんじゃないの!?)
私「別に私が電話を差し上げてもいいですけども! 山口県警のだれさん宛にかけたらいいんですか!?」
警視庁「あ……いや……電話に出たものによって違うので……」
私「担当はいないんですか!?」
警視庁「電話に出たものに伝えていただければ……」
私(怪しすぎる!!!!)
警視庁「でも、容疑を晴らすにはこのままつないだ方が……」
私はここで、警視庁を名乗る男の電話を「では、失礼します」と切りました。
勇気を出して電話を切った!そして最寄りの警察署に電話

電話を一度切って、最寄りの警察署に電話を掛けました。
手は震えていたし、心臓はバクバクだったと思います。
・静岡市の警察に電話
警察「もしもし(女性)」
私「お忙しいところすみません、ご相談があるのですが……」
警察「どういったご用件でしょうか……?」
私「いま、警視庁の○○さんってかたから電話があったんです。いけだたかまさを捕まえて、そこに私のキャッシュカードがあったって」
警察署「なるほど、それで何と言われましたか?」
私「警察に疑われているから、今から山口県警に来てくれと言われたんですけど、私は静岡に住んでいますからいけなくて……。そうしたら、山口県警に今から電話をつなぐって言われて……でもなんだか変で電話を切ってこちらに電話をしたんです……」
警察署「それは詐欺です(キッパリ)電話を切って正解です」
私「で、ですよね~~~~~」
同じような詐欺の電話があったら
警察署「まずは、警察署としては知らない番号からの電話をとらないことを基本としています」
警察署「しかし、個人事業主さんでしたか? 知らない番号から電話がかかってくることもあるんですよね?」
私「は、はいその通りで……」
警察署「であれば、今回のように警察を名乗る電話には折り返しをすることをおススメします」
警察署「そして、警視庁から電話がかかってくることや、警察がスマホから電話をしてくることはまずないと知っておいてください」
私「わかりました……」
詐欺師に住所がバレているけれど大丈夫!?
私「あ!!! 私の住所や名前、スマホの番号など、すべて合っているんです! 知られてしまっていて大丈夫ですか!?」
私「私シングルで子どもと2人きりなので家に来られたりしたら……(恐怖)」
私「そういえば、この時間は家にいるのかとか、外出するかとか、人に会うかとか聞かれました(汗)」
警察署「それは不安ですね。でもお話を聞いた限りだと、犯人が家まで来るリスクを冒すことはなさそうです」
警察署「直接家に行くリスクを上回るのは、お金を持っている一軒家だったり、ご老人です」
私「な……なるほど……」
警察署「清水区では特殊詐欺のプロジェクトチームがあって、もしかしたらお電話が行くかもしれないので、不安だったら相談してみてください。もちろん他にも何か思い出して心配なことがあればいつでもお電話ください」
警視庁「プロジェクトチームからお電話が行っても、このように折り返しの対応をしてもらってももちろん大丈夫ですからね!」
警察署の方はとても親身に話を聞いてくれました。
静岡県警察:身近な犯罪と特殊詐欺情報
なぜ私は詐欺に気が付けなかったのか
不思議だったのは、私は警視庁と名乗る男との会話で、怪しい点をたくさん感じていました。
・警視庁から電話は来ないと聞いたことがある
・警察ってスマホで電話をかけてくるのか?と思った
・話の意図がつかめなかった
・銀行口座を2つつくれると言ったこと
・山口県警まで来てほしいと言われたこと
・電話をつなぐのなら、直接山口県警がかけてくればよかったこと
それなのに「詐欺」には結びつかなかったんです。
静岡市の警察署に電話をした時も「何かが怪しい、念のため」という気持ちでした。
ひとつは考える時間がないくらい相手の男がずっとしゃべっていたこと。
(親近感を与えて信用させるため? 些細な情報収集をするため?)
そして時折こちらを怪しむようなそぶりを見せたこと。
(警察だと思い込ませて、脅すことで協力させようとした?)
お金に関することを言われなかったから?
(役割分担していたのかもしれません)
あとは「自分が詐欺に合うわけがない」と慢心した気持ちがあったからかなとは思います。
一応……何かあってからでは遅いので、子どもの小学校には「こういう詐欺の電話がかかってきたので、もし子どもへの呼び出しがあっても、引き渡さないでください」と連絡を入れました。
詐欺の電話から3日ほど経ってはおりますが、警察の方の言う通り、私も子どもにも何も起きてはいません。
もし電話を切らなかったら、続くことは?
もし、電話を切らなかったらどんな事態になっていたのか、気になった私は調べました。
おおむね同じ「いけだたかまさ」の共犯を疑う電話がかけられた人は、こういった流れのようです。
・山口県警に電話を転送される(別人が電話に出る)※私は山口県警でしたが、たぶんその人の家から遠い警察署を言っているのだと思います。実際に行ける距離であれば、詐欺が成り立たないから
・「犯人とつながっていないか確認するために信号検査行う。けれどLINEはアプリなので信号検査ができない。だから警察署のLINEアプリとつながってもらう」と言われ、伝えられたLINEのIDを検索し、友達登録するように言われる
※LINEだけではなくズームなどでのビデオ通話の可能性あり
・LINEもしくはズームのビデオ通話をつなげて、取り調べを行う(1人にさせられる)
・「こちらの警察手帳を提示するので、あなたも身分証を提示してくれ」と言われる。
(その歳「免許証番号などは隠してもらって構わない」と言われることもあるよう)
・生年月日
・住所
・現在の仕事
・世帯年収
・家族構成
・持ち家or賃貸(家賃含む)
・持っている銀行口座
・ローンや借り入れがあるかどうか
・貯金
ここで、お金がないと思われると「現段階では疑いを取り消す」と言われる解放されることもあるようです。
お金があると思われると……
しかし、お金があると思われると……このような流れになります。
・「あなたには逮捕状が出ている」とビデオ通話で逮捕状を見せられる
・犯罪に関わっていない証明として、暗号資産取引所であるビットフライヤーの口座を開設するように言われる
・指示に従いながら、開設をする
・確認のためにそこに現金を入金するように言われる
・知らない間に入金した金額が引き落とされている
詐欺に引っかからないために
詐欺に引っかからないためには用心することが大切だと学びました。
私は誘導される前に電話を切りましたが、それでも個人事業主だと言ってしまったせいで2日後には「還付金詐欺」の電話がかかってきました。
詐欺師だと早く見抜くために、以下の注意点を覚えておいてくださいね!
・警視庁から電話が来ることはない
・警察を名乗る電話の場合は、一度切って該当する警察署の番号を自分で調べてから折り返す
・警察が電話で聞き取り調査や逮捕状を見せてくることはない
・勇気がでなければ電話を切って誰かに相談
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